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27才

子供らしくない子供だった。
外の世界がぼんやりとしか見えなかったので、動くことに消極的だったために、自分の心の動きに集中していたせいかもしれない。

「いじめられるから嫌だ」と泣いて抵抗する私を、祖母や母は引き摺るようにして幼稚園へ連れて行った。小柄でやせっぽちな自分が大人に勝てるわけがないと諦めた頃、どうしたら幼稚園へ行きたくなるかを思案した。
「誰かを好きだと思い込もう。そしたら楽しくなるはずだ。」そう決めた私は、ある男の子を無理矢理好きだと思い込もうとした。その子はおとなしく、いじめられる私を助けてはくれなかったが、自分から他人をいじめることは決してしないような子だった。
「私はあの子が好き。だから顔を見るために幼稚園へ行こう」そう呪文のように唱えながら、なんとか自分を奮い立たせていた。
本当に好きになることはなかったが、殺伐とした日々をやり過ごすための自分なりの上手い対処法だと思っていた。
しかし大人になってからこの出来事を話すと、「そんな事を考える幼稚園児はいない」と言われた。

サンタクロースの存在など信じたこともないのに、「子供らしくしなきゃ」と、枕元の贈り物を持って「サンタさんが来たよ」と親に見せに行き、あまりの白々しさに「お父さん、お母さん、ありがとう」と言いなおしたこともある。



大人になるまでの長い間、自分の実年齢と中身が合っていない気がしていた。
身体に合っていない服を着ているかのような、そんな感じだ。
どうやったら、世間一般的な子供になれるのか、ずっと模索していたように思う。

そんな私が27才のある日「あ、今だ」と思った。
自分の心が、ちょうどいい外側に収まっている感じ。無理をせず、何をしても楽になった。
世の中に、そんな感覚を味わった人はいるだろうか。
大人になるのは素晴らしいと心の底から思った。

その後どうなったかというと…
当然のことながら外見がどんどん古びていき、中はそのまま、という状態である。


今でも時々思う。
27才とは自分にとって何だったのだろうと。


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