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Y君がしんじゃった

3日前。
◯◯営業所のY君が、自宅で亡くなっていたという、とんでもないニュースが飛び込んできて、部内が異様な空気に包まれた。

警察から連絡があったというから、ちょっと普通のことではなさそうだ。

一人暮らしだったというY君の元へ、関東からご両親が向かわれたという。

私とY君は、3週間ほど前に催事の展示会場で一緒だった。社員が集まる勉強会や日常の電話連絡で何度も話はしていたが、長時間にわたって顔を合わせるのは初めてだった。


ふんわりパーマヘアにおしゃれなスーツ、おとなしい顔立ちのY君は、営業職としては内向的で、不思議な雰囲気を持つひとだった。

Y君が担当していた得意先のリストを見ると、沢山の店舗をまわっていたことがわかった。

なにがあったのかはわからない。
どんな状況で発見されたかもわからない。

私が知っているのは、あの日のことだけだ。



準備で製品のディスプレイをしていると、「僕こういうの好きなので、やらせてください」と器用に飾り付けをしてくれたこと。

センスあるね、と褒めると「上手くはないんですけど、こういう細かい作業が好きなんです」と言いながら、自分で施したというデコレーションが輝くスマホケースを見せてくれ、恥ずかしそうに笑っていたこと。
「こんなことができるなら、営業から部署異動したいな」と言っていたこと。

他社の担当者と仲良くなれたと思っていたのに、会場ではその人が「他の人とばかり話をして、僕を見てくれない」と拗ねていたこと。

「関西弁の女性は苦手なんですよね」と言いつつ、私に色々話をしてくれたこと。



展示ブースでの退屈な待ち時間を、腰が痛いだの脚が痛いだの愚痴を言い合いながら乗り越えた、あの日。

Y君が死んでしまわなければ細かいことなど忘れてしまったかもしれない、そんな何でもない一日だったのに。
突然いなくなったことによって、忘れてはいけない日になってしまった。



ご両親に渡すために、過去の催事の写真からY君の姿を拾い、クラウドに移していく。

そんなに深く関わっていたわけでなくても、人の死は重く、辛い。

あの日、Y君が写っていた写真はたった1枚だけで、顔はカメラと反対を向いており、表情はわからなかった。

あの日、彼は楽しかったのかな。


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